弐ノ刻   初日 19時28分25秒 廃島 輪ノ廻リ 市街地



見たところ、昭和後期の町並みが広がっており、たばこ屋、喫茶店などの店が多く立ち並んでいた。ただここもやはり廃墟になっており、当たり前だが街頭一つさえもついていない。

高台にのぼった三人はお互いに顔を見合わせ、自分達の置かれている状況を再確認していた。

スグルは、先程の一件で目が赤くなっていたのだが、それよりも何かを決心したような立ち構えをしていた。

スグル->「・・・よし・・・俺は・・・俺のやるべきことをやろう・・・」
赤い風->「やるべきこと、とは?」
スグル->「・・・さぁな。とりあえず、このまま死ぬわけには行かないよ・・・」
yuu->(真っ赤・・・・・、全部・・・。)
赤い風->「どうした?」
yuu->「・・・・・・ここって、なんなんですか・・・?」
赤い風->「さぁ?私にはわからないな」

形容しようのない使命感に駆られたスグルは市街地の方を一心に見つめていたが、やがて光を放つ何かをそこに見つけた。火だ。

yuu->(今度は・・・・、何・・?)
赤い風->「火か、あれはさっきの…」

赤い風がそういいかけたとき、その火のある地点から何かが空中に放たれた。照明弾だった。

yuu->「!!?何ですか今の!?」
赤い風->「どうする?行ってみるか?さっき私たちを殺すような話をしていたやつらのところに」

そう言って振り向いた赤い風の視界にはスグルの姿は無かった・・・

赤い風->「!!スグルは!?」
yuu->「スグル君!?何処!!?」
赤い風->「あのバカ、また単独行動を?」
yuu->「どうしよう・・・・、赤い風さん。」

すると、赤い風のポケットからノイズが聞こえてきた。どうやら通信機が信号を受けたらしい。

赤い風->「ぬ、何だ?」(おもむろに取り出しスイッチON)

声の主「あー、此方アルビ・・・一尉、こちら・・・、乗組員の・・・・・た・・・ヘリが墜落した。乗員は自分以外全員死亡・・・・いや、正確には・・・・」
yuu->「・・・・・赤い風さん。それなんなんですか・・・?」
声の主「誰か聞こえる者がいたら・・・・・・北緯・・・・だ、これは・・・・。一体どうなってい・・・・・・」
赤い風->「説明は後だ、アルピノ一尉。こちら京極中将。しばし待て、すぐに救援に向かう」
yuu->「・・・・・・・答えてください・・・・・。」
声の主「だ・・・聞こえ・・・・、ノイズが・・・・」

どうやら通信は向こうから一方のみのようだ。電波状態が悪いのか、此方の声は届いていないように思える。

赤い風->「場所はわかった、すぐ向かう」(一方的に切る)
yuu->(やっぱこの人・・・・、怪しい、怪しすぎる・・・・。)
赤い風は通信機をしまうと、身振りでyuuを呼び寄せ、市街地の方へ向かっていった。
yuu->「あ、まってくださいよ!」

商店街の廃墟へ侵入した二人は、小走りで墜落した現場に向かっていた。
しかし、老朽した商店の建物や路地裏など、あの蠢く屍人どもが隠れるのには格好の場所に思え、それが二人に常に緊張を与えていた。

yuu->(なんかでそう・・・・。)
赤い風->「気を抜くな」
yuu->「は、はい!」

二人は着実に商店街を走り抜けていたが、急に赤い風の頭に何者かの視線が入り込んできた。

赤い風->「ぬぅ、今度は誰の視界だ?」
yuu->「どうしたんですか!?」

すると、その意識は二人、、三人、四人と増えていき、それがyuuの頭の中にも嫌というほど入り込んできた。

赤い風->「……不快だな」
yuu->「・・・入ってくるな!!」

それらは明らかに自分達の歩いている道の両端の建物から入り込んできている。六人、七人、八人・・・・

yuu->「ど、どうしよう・・・。アイツらだ・・・・・。」
赤い風->「閃光弾は残り何発あるか?」
yuu->「えっと、さっき使ったから・・・・、あと6個です。」
赤い風->「そうか、やつらが攻めてきたら投げろ。いいな」
yuu->「え!?ちょ、使い方わかりませんよ!!」

彼等が小声で話をしていると、いきなり前方から人影が飛び出してきた。
それは紛れもなくあの屍人の仲間であり、目から血を流している。


警官なのか、それは制服姿でふらふらを此方に歩み寄り、拳銃を腰から引き抜いた。

yuu->(えっと、たしかピンを抜くんだっけ・・・・?)
警官屍人「りょ・・・了解、射殺します・・・・・」
赤い風->「早くしろ!」

乾いた銃声が響き、赤い風の立っている場所の地面をえぐり飛ばし、銃を持った警官は不気味な笑い声を上げた。

警官屍人「う・・・・ウヒャヒャヒャヒャヒャぁぁッ!!」
yuu->「うまくいってくれ!」(ピンを抜き、投げつけた)
警官屍人「無駄な抵抗はやめ・・・」

そこまで警官が言った途端、眩い閃光と共に両目を押さえながら倒れこみ、手にしていた拳銃を地面に落とした。

赤い風->「今だ!」(拳銃を取りに向かう)

しかし、その爆音を聞きつけたのか、彼等の周りの商店の扉が次々と開き、数え切れないほどの屍人達が顔を出した。

yuu->「赤い風さん、マズイですよ!!?」

彼等は一斉に雄たけびを上げ、なにかしらの鈍器を手に二人の方へ小走りで歩み寄ってきた。
12・・・13・・・・14・・・・ 少なく見積もっても16はいるようだ。幸い自分達よりも後方であるが。。。。

yuu->(作戦失敗じゃないですか!!)(ナイフを構える)
赤い風->「くっ、不本意だが…yuu!目をつぶれ!!」(そういうと5の閃光弾を全部投げつける)
yuu->「あ、ちょ、勝手に!?」(目をつぶる。)

yuuが目をつぶった丁度その時、閃光弾が炸裂した。屍人たちは悲鳴をあげながら床に倒れこみ、個々の目を両手で押さえながら悶え苦しんだ。

赤い風->「今のうちに突っ切るぞ」(こっそり拳銃を拾いながら)
yuu->「は、はいぃ!!」

二人は一心不乱に走った。あの屍人たちの声が背後からますます大きくなっていくように思えた。
すると、前方に商店街からあのヘリの墜落した広場らしき所へ続く入り口が見え、巨大な釣看板が頭上にあった。

yuu->「あ!あれってあの時の!!」

見ると、なにやら手を此方に大きく振っている人影が見えた。

男「こっちだ、二人とも早く来るんだ!!」

見ると、それは先刻ヘリの視界を探った時に見えたゴーグルを被った色白の兵士であった。自動小銃を肩から下げ、一心にこちらに呼びかけている。

男「はやくしろ!!後ろを見るな!!」 

そう叫ぶのが聞こえ、彼がヘリの残骸に上半身をもぐりこませたのが見えた。

yuu->「はぁはぁはぁ、あの人。赤い風さんの知り合いですかッ!?もうそろそろ、くたくた。」
赤い風->「さぁ?さっきの人か?」

もう顔がお互いに確認できる距離まで来た時、その兵士が再びヘリの残骸から顔を出した、彼の方には何か大きな筒状のものが担がれていた。

yuu->「・・はぁ・・・はぁ・・・・ん・・・・・何ですかアレは?」(赤い風を見ながら)
赤い風->「あれは、…俗に言うロケットランチャーだな」
男「二人とも伏せろぉぉーーーーッ!」
赤い風->「言われなくても、伏せろ。危険だぞyuu」
yuu->「え!?うわぁ!?」(こけた。)

爆音のような音と共に、地面に倒れこんだ二人の頭上を凄まじい速さで何かが掠めていった。

二人の後方で爆音が轟き、凄まじい炎を上げた巨大な釣看板が落下し、その下をくぐろうとしていた屍人たちを大勢たたきつぶした。

男「はぁはぁ・・・・大丈夫か、あんたら・・・?」(肩に担いでいたロケットランチャーを投げ捨てた)
yuu->「いった〜・・・・。」
赤い風->「私は問題無い、きみがさっきの無線のアルピノ一尉か?」
アルビノキャット->「そうだが、私の救助信号が聞こえたのか? もしかして隊の人間か?私は陸上自衛隊化学防護第7小隊のアルビノキャット一尉だ。よろしく!」
赤い風->「私は赤い風だ。それがだな、記憶が曖昧で…何故か持っていた無線がだな……まぁいい。」
yuu->「あ、僕yuuって言います。よろしくお願いします。」(ぺこり)
アルビノキャット->「赤い風・・・本部の人間か? まぁいい、とりあえずここは確保した。大丈夫なのか?」
赤い風->「あぁ、それにしても疲れた…それにさっきから異常に頭が痛い。何かないか?」
アルビノキャット->「ああ・・・無理もなかろう、野戦用の寝袋でよければ用意できるから好きに使ってくれ。話はそれからだ」
yuu->「あ、はい。(元気な人・・・・。)」
赤い風->「わかった、だが何時やつらが襲ってくるかわからないからな」
アルビノキャット->「今のところは安心だ。何かあったら起こす事にしよう、私はここを警備する」